憧憬。

 

かって、私にはどうしても入社したい企業があった。

 

大学3回生の後期、自分が何の為に、誰の為に生きていけば良いのか想像出来ない時期があった。

 

私は無為に日常を過ごす一方で、多くの友人はどこかで誰かから必要とされ忙しそうに活動していた。

 

社会人になっても同じ様に何も考えないで生きて、誰からも必要とされず死ぬんだろうなと思っていたし、それでも良いと思っていた。

 

そんな中、3回生の後期になると周りが将来に向かって動き始め事に気付いた。

 

何もやって無いのはヤバイそれだけは分かっていた。

 

とは言え、当時知っていた企業はプロ野球の球団を持っている企業かBtoCの食品メーカーしか知らなかった。

 

だが、新聞はゴワゴワの紙を月4000円で買うのか理解できなかったし、IT企業の社長はパリピっぽくてなんか嫌いだし、シャウエッセンは高くて買えない。

 

仕方が無いので、インターン東洋経済の年収ランキングを上から順にエントリーした。

 

憧れの企業との出会いは上から順に応募したインターンだった。

 

 

グループディスカッションのテーマとメンバーに恵まれ運良くインターンに参加する事が出来た。

 

ほとんどの社員が理系で世間からも高学歴と呼ばれる人達で漫然と学生時代を過ごしてきた私とは全く別の人種だと感じた。

 

そして、今まで治らないとされていた疾病の治療に向けて、何千億という開発費をつぎ込み、日本を代表する頭脳が日々戦う姿を見た。

 

私もその一員になりたいと思った。

 

まだ治療法の無い疾病の治療に向け、

自分の人生を賭けたいと思った。

 

インターンが終わった後、本採用に向け自分なりにベストを尽くした。大学時代で一番努力したと胸を張って言える時期だった様に思う。

 

片道5時間以上かけ、社員に会いに行った事もあったし、比較する為に様々なインターンや企業の方ともお会いした。

 

学生時代一番頑張った事はその企業に入る為の準備であると言っても過言では無いと思う。

 

が、残念ながら最終面接で「違うね。」となってしまい憧れの企業には入社出来なかった。

 

だが、同じ業界でライバルとして仕事をしている。

 

上手く行く事ばかりでは無いが充実した社会人生活を過ごしている。

 

だらしのない1人の大学生が目的を見つけ、何とか社会人やっているのもその企業のおかげだと思っている。

 

今では毎日読む新聞でも入社したかった企業の名前を探してしまう。

 

 

そんな中、有望とされていた治験の失敗と早期退職のニュースを見た。

 

有望視されていた開発の失敗により

大変厳しい状況だろうと想像する。

 

早期退職であるが、中高年を対象にしたリストラである。

 

エントリーシートの添削をしてくれた社員や最終面接の前に声をかけてくれた社員は今、どこにいるのだろうか。

 

また、活躍出来るフィールドを求め、転職する若手も多いと聞いた。

 

社内の状況は大変厳しいと考えられるが今でも憧れの企業である。

 

それは「行きたかったけど、行けなかった。」からだと思う。

 

それだけが彷徨っている。

 

 

 

追記

あのインターンが無ければ、全く違う職種に就いていただろうし、無職までありえた。

 

そして今、何とか飛行出来ているのも3回生の後期で少しは成長し、他の人よりストックがあるからというのもある。

 

今でも、職種を決めるきっかけとなったあのインターンと人事の方に感謝しかない。